便がすっきりしないというのはつらい物です。
毎日便通を調える薬を飲むのも…そういう時こそ漢方薬で改善できないか考えてみましょう。
便秘自体は「虚実」という概念で考えます。
漢方では様々な「モノサシ」で考えてその人の状態や体質をみます。
その中で「虚実」というものがあります。
「虚実」とは
体は細く、弱い=虚証
体が大きくて丈夫=実証と考えます。
便秘の場合はどちらもあり得ますが、主に実証の便秘は大便が出る時は太く長いのが出る。
逆に虚証の場合ですと兎状のコロコロとした便が出ます。
漢方薬の一番単純な理論としては「実すれば瀉し、虚すれば補う」とあります。
実証の便秘は体の中に便がたまっている状態ですから、それを出す→瀉す治療を行います。
虚証の便秘とは便は多くはないが出す力が弱いため、力をつける→補う治療を行います。
ただ、便秘だから便を出す薬と考えるのではなく、便通が悪い人はどのような状態か考えて使う必要があります。
便通を体質として考えるとこともできる。
漢方薬の効能効果を読まれたことはありますか?
例えばですが
ツムラ桃核承気湯より
体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:
月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症
このように便秘しがちというものを体質と考えることもできます。
便秘もあるけど実は月経痛が…などとは女性の方の相談をしているとよく耳にするお話です。
このように便秘を一つの体質として別の悩みがあれば一緒に治すことも可能かもしれません。
どちらを選ぶにしろ、便を出す漢方薬も正しく選ばないと下利になるので注意です。
便秘自体に効果のある漢方薬
便出しとしてつかわれる漢方薬を紹介します。
大黄甘草湯
便を出す基本処方です。
特に「大黄」という生薬が便を出しますが、これだけだと耐性ができてしまい、どんどん量を増やす必要が出てきます。
ですが、ここに「甘草」という生薬が入るだけで耐性が出来にくくなります。
この「大黄」という生薬が入っているものは便秘傾向の方にあう漢方薬でもありますから、下利の傾向がある方は「大黄」が入っていないのをチェックといいでしょう。
桂枝加芍薬大黄湯or桂枝加芍薬湯
「桂枝加芍薬湯」は下痢でも便秘でも使用できますが、基本的には虚証の状態に使われます。
あまり作用が強くないので、最初試すにはいいかもしれませんね。
そこに便を出す「大黄」を加えた「桂枝加芍薬大黄湯」はより便秘の強い方に使います。
麻子仁丸
主にコロコロの便に使われる漢方薬です。
食物繊維という考えから行くと丸剤の方が食物繊維が残っていると考えられます。
名前も麻子仁"丸”という名前ですから、購入されるときは丸剤かどうか確認すると良いと思います。
便秘を状態としてとらえた時の漢方薬
全て便秘という状態であることを前提にお話しますので、それ以外の特徴についてお話します。
あくまで一部だけです。たくさんありますのでどれが合うかは漢方に詳しい先生にご相談ください。
桃核承気湯
先ほども名前は出ましたが瘀血という状態を改善する作用があります。
生理が来る前日や初日に調子が悪かったり、イライラが強かったり、精神的な症状がある方にも使われる漢方薬です。
柴胡加竜骨牡蠣湯
柴胡剤と言われる漢方薬の一つで、みぞおちから肋骨あたりにかけて違和感がある人に使われます。
また、龍骨牡蛎というものは精神を安定させる作用があると考えますので、精神疾患などに使われることが多いです。
病院でもよくつかわれる漢方薬ですが、ツムラ柴胡加竜骨牡蠣湯には便を出す「大黄」が入っていないので、便秘が強い人には別のメーカーのものが良いでしょう。
逆にツムラ柴胡加竜骨牡蠣湯は便秘じゃなくても使えるというのがポイント。
私個人的には男性向けによくつかわれる漢方薬ではないかと思います。(女性でも使うは使うが件数は少ない印象です)
大柴胡湯
こちらも柴胡剤というグループの漢方薬です。
高血圧や神経症などにも使われることはあります。
市販の漢方薬に詳しい人であればこれを「やせ薬」として認識しているかもしれません。
大柴胡湯は筋肉太りの人に使われる漢方薬です。
そこから伝言ゲームのごとく「痩せるかも?」と思い込んでしまっているパターンです。
安心してください、飲むだけではやせません。
筋肉が多い人が煩う不調に使うと思ってもらえれば良いかと思います。
大黄牡丹皮湯
牡丹皮という炎症を抑える生薬が含まれているため、便秘に加え腹痛が激しい時に使われます。
昔は虫垂炎などに使われていて、癒着もせず根本的に治癒する例も多かったそうです。
凄いんですが、現代社会虫垂炎と思ったら病院に行く方が早いですよ。
乙字湯
乙字湯は痔の漢方薬です。
痔の原因には肝臓の血流が関係していると考え、その対策に柴胡、黄芩を加えている。
名前は違いますがこれも柴胡剤と言われるグループです。
乙字湯は江戸時代、水戸藩のお医者さんであった「原南陽」が使ったといわれています。
当時に西洋医学の知識があったかは不明ですが、乙字湯に肝臓の血流に効果のある生薬を加えたセンスは脱帽ものですね。
防風通聖散
防風通聖散のお話を詳しくするには一貫堂医学について話をする必要があります。
一貫堂医学の中で臓毒証(食毒)と言われる体質がありますが、この体質のものに使われた漢方薬です。
一貫堂医学を考えた森道伯氏は晩年防風通聖散を一番よく使ったといわれています。
理由としては当時(昭和初期あたり)の好景気による肉食への変遷です。
食べ慣れない肉食により体の中に蓄積しそれが毒として体に不調をきたしているから、ではないかと言われています。
当時ですらそのように言われています。現在あなたの食事はどうですか?
痩せるために肉を増やしていませんか?
食事というものは大変重要ですから、痩せるかも?の前に食事や生活を見直しましょう。
防風通聖散はやせ薬として一般認識されているかもしれませんがここまで読んでいただいたあなたには説明不要ですね?
安心してください、飲むだけではやせません。
まとめ
便秘自体に使う漢方薬も、便秘を体質としてとらえるかと大きく分けて二つ紹介しました。
どちらもあくまで一部です。
もっとたくさんありますから、何とかお腹をすっきりさせたいあなたは一度専門家へご相談いただくのもベストでしょう。
そして、便通で忘れてはいけないことは生活習慣です。
生活習慣をととのえず、漢方薬を飲むだけで解決させようとするのは少し難しいと思います。
試しに紙に書いてみて何が足りないか何が多いかなどを見直すのもよいでしょう。
「漢方薬局にいって青汁や緑色の錠剤を勧められた!」
これも生活習慣の改善の為です。
野菜が足りないといわれているのかもしれませんね。