「実は痔なんです…」
痔に使われる漢方薬「乙字湯(オツジトウ)」のお話です。
乙字湯は基本的には痔の漢方です。
乙字湯は、承認されている効能・効果が痔と便通に限られた漢方薬です。
市販薬では「体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」、医療用では製剤により「病状がそれほど激しくなく、体力が中位で衰弱していないものの次の諸症 キレ痔、イボ痔」「痔核、脱肛、肛門出血、痔疾の疼痛」などとされています。
痛みが激しい場合や、痔ろうが疑われる場合は、漢方薬で様子を見るより先に、肛門科などの医療機関で状態を確認していただくほうが確実です。

乙字湯を中身から見てみましょう。
当帰(トウキ)
柴胡(サイコ)
黄芩(オウゴン)
甘草(カンゾウ)
大黄(ダイオウ)
升麻(ショウマ)
以上6味の漢方薬です。
中身から考えるとすれば、
「柴胡(サイコ)」「黄芩(オウゴン)」の消炎作用
「大黄(ダイオウ)」の下焦(体の下のほう)の熱を便として下す。
「升麻(ショウマ)」により下がりすぎた気を持ち上げる。
といったところでしょうか。
また、昔の本には「甘草(カンゾウ)」の量が少ないと効果がないと書かれている一文もあります。
「甘草(カンゾウ)」に関しては質の良し悪しが関係している場合が多いので、
煎じ薬のような生薬の質を確認できるような状態の方がよいでしょう。
生薬の質は、効き方や体に合うかどうかに関わると考えられています。
私はこの6味を「上げて、下ろす」配合と見ています。痔は、長く座る・いきむといった暮らしで気が下に落ち込み、そこに飲酒などの熱がこもって腫れや出血になる、と漢方では考えます。升麻と柴胡で落ちた気を持ち上げ、大黄で下にこもった熱を便と一緒に抜き、黄芩で炎症を冷ます。当帰は原南陽の原方にはなく(原方は大棗と生姜)、後に浅田宗伯が入れ替えたと伝わります。私はこの当帰を、出血で失った血を補う役と見ています。この上下の動きが同時にあるのが乙字湯で、江戸の医家が実戦向きに作り、後の医家が磨いた処方だと感じます。
だから合うのは、便が固くていきみがち、患部に熱感や腫れがあり、痔と分かっている出血もある方。逆に、もともと下痢しやすい方、冷えが強く体力が落ちている方は、大黄が合わずお腹を壊すことがあるので、痔でも別の方向を考えます。
ただし、カンゾウは量が増えるほど偽アルドステロン症やミオパチーのリスクが高まる生薬でもあります。自己判断で量を増やしたり、カンゾウを含む他の漢方薬と重ねたりしないでください。
「乙」字湯の名前の由来は??
実は「乙字湯」は日本生まれの漢方薬です。
「原南陽」という方が江戸時代ぐらい作られた漢方薬です。
(ちなみに「原南陽」はみなさんご存じの黄門様で有名な水戸藩のお医者さんです。)
その方が戦場の時によく使われるであろう漢方薬を4つ作りました。
「甲字湯(コウジトウ)」
「乙字湯(オツジトウ)」
「丙字湯(ヘイジトウ)」
「丁字湯(チョウジトウ)」
と名付けました。
簡単にいうなれば、
「甲字湯」は打撲や打ち身に
「乙字湯」は痔に
「丙字湯」は排尿のトラブルに
「丁字湯」は胃腸病に
といったところでしょうか。それぞれ詳しい説明は機会があればお話ししますね。
乙字湯を飲む前に確認したい注意点
以下の注意は、医療用・市販品の添付文書(2026年9月時点)の記載をもとにまとめています。
妊娠中・妊娠の可能性がある方
医療用では、乙字湯は「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい」とされています。含まれるダイオウの子宮収縮作用および骨盤内臓器の充血作用により、流早産の危険性があるためです。市販薬でも、妊婦または妊娠していると思われる方は、服用前に医師・薬剤師・登録販売者へ相談することとされています。妊娠中・妊娠の可能性がある場合は、自己判断で飲み始めないでください。すでに服用中に妊娠がわかった場合も、ご自分の判断で続けたり中止したりせず、産科の主治医・処方元にご相談ください。
授乳中の方
市販の乙字湯(ツムラ漢方乙字湯エキス顆粒)では、「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳をさけてください」とされています。ダイオウに含まれるアントラキノン誘導体が母乳に移行し、乳児に下痢を起こすことがあるためです。医療用では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続または中止を検討することとされています。
すでに便秘薬・他の漢方薬を使っている方
市販の乙字湯では、服用している間は他の瀉下薬(下剤)を飲まないこととされています。また医療用では、他の漢方製剤との併用時に生薬の重複、特にダイオウを含む製剤との重複に注意することとされています。カンゾウを含む製剤やグリチルリチン酸を含む製剤と併用すると、偽アルドステロン症や、低カリウム血症の結果としてのミオパチーがあらわれやすくなるとされています。便秘薬や他の漢方薬を飲んでいる方は、重ねて飲まずに医師・薬剤師へご相談ください。
体質によっては向かないことがあります
医療用では、下痢・軟便のある方、著しく胃腸の虚弱な方、食欲不振・悪心・嘔吐のある方、著しく体力の衰えている方は慎重に扱うこととされています。市販薬でも、体の虚弱な方、胃腸が弱く下痢しやすい方、高齢の方、むくみのある方、高血圧・心臓病・腎臓病の診断を受けた方は、服用前に相談することとされています。
気をつけたい副作用
医療用では、重大な副作用として間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害・黄疸が挙げられています。乙字湯にはカンゾウとダイオウが含まれるためです。息切れ・空せき・発熱、むくみ、体重の増加、血圧の上昇、手足のだるさ・しびれ・つっぱり感、力が入らない、だるさ、皮膚や白目が黄色くなるといった症状に気づいたときは服用を中止し、医師・薬剤師にご相談ください。そのほかの副作用として、発疹・発赤・かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢が報告されています。
乙字湯はずっと飲んでも大丈夫??
市販の乙字湯の添付文書では、「長期連用する場合には、医師、薬剤師または登録販売者に相談すること」とされています。また、1ヵ月位(きれ痔・便秘に服用する場合には5〜6日間)服用しても症状がよくならない場合は、服用を中止して相談することとされています。
長く続けるときに確認したい点が2つあります。ひとつはカンゾウで、医療用では「本剤はカンゾウを含有するため、血清カリウム値や血圧値等に十分留意すること」とされています。もうひとつはダイオウで、瀉下作用には個人差があるため、下痢や軟便が続く場合は飲み方の見直しが必要とされています。
医療用でも、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には継続投与を避けることとされています。漫然と飲み続けず、処方元の先生や、お求めになった薬局へ一度ご相談ください。
まとめ
乙字湯は痔に使われる代表的な処方のひとつですが、妊娠中の方、授乳中の方、胃腸が弱く下痢しやすい方、高齢の方などは、そのまま飲み始めてよい薬ではありません。
今の症状に合うかどうか、いま飲んでいる薬と重ならないかを含めて、医師・薬剤師・漢方薬局にご相談ください。
なお、おしりからの出血が続く、強い痛みや腫れがある、しこりが戻らない、発熱をともなう、便が細くなる・黒い便が出るといった場合は、痔以外の病気が隠れていることもあります。市販薬で様子を見続けず、肛門科・消化器科などの医療機関を受診してください。
痔というのは大体日本人に3人に1人は悩まれている疾患です。
当店では相談担当は女性も男性もいますので、
安心してご相談いただけるかと思います。

費用が気になる方は、相談前に料金の目安もご確認いただけます。無理な購入をおすすめすることはありません。
処方薬は自己判断で中止・減量・変更しないでください。
気になる点だけでも、LINEやお電話でお聞かせください。
いきなり相談するのは気が引ける、という方は、先にLINEの「かんたん体質チェック」(13問・お名前不要・1〜2分)をお使いください。私が回答に目を通して、体質面から見たポイントを原則翌営業日までにLINEでお返しします。
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※ 添付文書の効能・効果および注意事項の記載は、2026年9月時点で各社の公表内容を確認したものです。
※ 漢方薬の体感には個人差があり、症状の変化を保証するものではありません。急な症状の悪化や救急の場合は、医療機関の受診を優先してください。

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