「当帰芍薬散を飲んでいるけれど、効いている気がしない」
「生理痛にいいと聞いて買ってみたけれど、なんだか合っていない気がする」
こうしたお話を、ご相談の場で何度も聞いてきました。
当帰芍薬散はとても有名な漢方薬ですが、誰にでも合うお薬ではありません。合わない方には、合わないなりの理由があります。
合いにくいのはどんな方か、生理痛の出方をどう見分けているか、日ごろ店頭でお伝えしていることをそのまま書いてみます。
この記事はこんな方におすすめ
- 当帰芍薬散を飲んでいるけれど、効果を感じない方
- 生理痛で悩んでいて、当帰芍薬散が自分に合うか知りたい方
- 不妊治療を考えている、または実践されている方
当帰芍薬散が合わない人ってどんな人?
当帰芍薬散が合いやすい方は、昔から色白でやせ型、なで肩で冷え症、体力はあまりないという体質像で言い表されてきました。貧血やめまい、腹痛、全身のだるさ、月経不順、生理痛などがある場合に使われるお薬です。
裏を返せば、色黒でがっしりしていて、体力がある方には合いにくいということになります。
そしてもうひとつ、見落とされやすい大きな分かれ道があります。生理痛です。
生理痛は 血が少ない ことから起こる場合もあれば、血の流れが悪い ことから起こる場合もあります。当帰芍薬散は前者に向く漢方薬なので、後者の方が飲んでも、手応えが出にくいことがあります。
「生理痛だから当帰芍薬散」とひとくくりにできないのは、このためです。
生理痛のタイプから見る、当帰芍薬散が合う人・合わない人
ご相談では、生理痛の出方を次のように伺っています。まずは血が少ないタイプから。
血が少ないタイプの生理痛の例
生理周期が人より短いと思う。または何か月も来ていない。
生理痛や体のだるさは生理の後半の方が強いと思う。
基礎体温が低めと思う。
血の量が少ないような気がする。
このようなタイプの方には、少ない血を補う方向の当帰芍薬散をお使いいただくことが多くなります。
いっぽう、こちらは血の流れが滞っているタイプです。
血流が悪いタイプの生理痛の例
生理初日や前日、前半に痛みがある。
周期が少し長めな気がする。
経血の量が多かったり、塊がある。
基礎体温が高いと思う。
なお、経血量が急に増えた、レバー状の塊が続く、痛みで日常生活に支障が出る、といった場合は、体質の話より先に婦人科でご相談ください。原因を確かめたうえで、漢方をどう組み合わせるかを一緒に考えられます。
血流が悪いタイプには、血の巡りを整える方向の桂枝茯苓丸や桃核承気湯などが候補に挙がります。ただしこれらは体力や体格の条件も見たうえで選ぶお薬で、妊娠の可能性がある方には使えない処方も含まれます。必ず専門家にご相談ください。
当帰芍薬散を飲んでも変化を感じにくいのは、このタイプの方に多い印象です。
ただし、生理痛の出方だけで漢方薬を決めることはありません。冷えの具合、むくみ、胃腸の調子、睡眠、疲れ方まで含めて、全身から見て考えます。上の2つは、あくまで入口の目安です。
どちらのタイプに近いか、ご自分では決めかねる方が一番多いところです。生理痛がいつ強いか、経血や冷えの様子を分かる範囲で聞かせてください。一緒に見分けていきましょう。
お薬手帳や箱の写真があれば添えてください。
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生理痛の漢方相談|毎月のつらさを相談したい方へそもそも合っているかどうか分からない、一番大きな理由
「当帰芍薬散を1年ぐらい病院でもらいましたが、効いているのか分かりません。」
「自分で買って飲んでるけど、体調がよくなりません。」
当店ではよく耳にするお話です。
合っているのか分からなくなる理由で一番大きいのは、その当帰芍薬散を、漢方の専門家が選んでいないことだと考えています。
漢方薬も医薬品ですが、西洋薬とは選び方が違います。それなのに西洋薬と同じ感覚で「生理痛だから当帰芍薬散を飲んでみて」と選ばれる例が、少なくありません。
そのまま調子を崩した状態で飲み続けて、ご相談に来られる方もいらっしゃいます。飲み始める前に、合うかどうかを一度ご相談いただけると安心です。
当帰芍薬散はどんな漢方薬?
当帰芍薬散は、加味逍遙散・桂枝茯苓丸と並んで古くから三大婦人薬と呼ばれます。ここに桃核承気湯・温経湯を加えて、五つを挙げる言い方もあります。
婦人薬のなかでも当帰芍薬散は、貧血気味の方や、体がむくみやすい方によく使われる漢方薬です。
☆更年期障害に使われている加味逍遙散については下をクリック!
加味逍遙散(ツムラ24)の効果はいつから|副作用・太る・やめどきの相談目安漢方薬は生薬の構成を見ると、どんな方向に働くお薬なのかが見えてきます。当帰芍薬散は次の6つの生薬でできています。
当帰(トウキ)/ 芍薬(シャクヤク)/ 川芎(センキュウ)/ 沢瀉(タクシャ)/ 朮(ジュツ:製品で蒼朮か白朮かが分かれます。ツムラは蒼朮、クラシエの当帰芍薬散料エキスは白朮)/ 茯苓(ブクリョウ)
| 当帰・芍薬・川芎 | 補血作用(血を補う方向) |
| 沢瀉・朮・茯苓 | 利水作用(水の巡りを整える方向) |
つまり血を補いながら、水はけを助ける方向の漢方薬ということになります。冒頭の「色白やせ型で冷え症」という体質像も、この構成から来ています。
出典は『金匱要略』で、2か所に出てきます。ひとつは婦人妊娠病の篇で「妊娠中にお腹の中がしくしく痛む」、もうひとつは婦人雑病の篇で「婦人のお腹の中のさまざまな痛み」に使う、と書かれています。古典ではそう書かれていますが、妊娠中の服用は医師の判断が前提です(詳しくは後述します)。原方の分量を見ると、芍薬が一斤で群を抜いて多く、当帰は三両です。名前は当帰が先ですが、私はこの処方を、痛みをゆるめる芍薬を主役に、当帰と川芎で血を補って巡らせ、朮・茯苓・沢瀉で余った水をさばく組み立てと見ています。
血を補う組と水をさばく組が一緒になっている理由も、ここにあります。血が足りないと巡りが弱り、行き場を失った水がむくみやめまい、だるさになって出てくることが多いです。血の不足と水の滞りは別々の話ではなく、同じ方の中で一緒に起こるものです。だから、貧血っぽさ・冷え・むくみ・めまいがそろっている方ほど、この処方が噛み合いやすい、というのが私の見方です。
そして、ここでも朮の違いが出ます。原方は白朮ですが、いまの製品は分かれていて、ツムラの当帰芍薬散は蒼朮、クラシエの当帰芍薬散料エキス(細粒・顆粒)は白朮です。同じクラシエでも生薬末を固めた錠剤は蒼朮ですし、コタロー・オースギ・三和は白朮、JPSは蒼朮と、メーカーと製品で分かれます。お手元の箱の成分欄で「ソウジュツ」か「ビャクジュツ」かを見れば分かります。白朮は胃腸を補いながら水を動かす側、蒼朮は湿気を乾かして発散させる側の生薬なので、私は、めまいやふらつきが目立つ方には白朮のもの、むくみが強い方には蒼朮のものを考えます(後述の「散剤とエキス顆粒の違い」でも触れます)。いま飲んでいる製品を続けるかどうかも含めて、処方を受けている方は処方元と、市販品の方は薬剤師にご相談ください。
この体質像には、昔から「当芍美人(トウシャクビジン)」という呼び名があります。覚えやすいようにと昔の漢方家が付けた呼び名で、いまも合う・合わないの目安として使われています。
もっとも、当芍美人に当てはまらないからといって困ることはありません。当てはまらない方には、その方に合う別の漢方薬がある、というだけの話です。
当帰芍薬散の効能・効果(添付文書から引用)
医療機関で処方される当帰芍薬散(医療用医薬品)の添付文書から、効能・効果を引用します。
筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症。
メーカーによって効能・効果の書き方は異なります。実際の服用については、お手元の製品の添付文書と、処方された医師・薬剤師の指示をご確認ください。
副作用としては、発疹・そう痒などの過敏症、食欲不振・胃部不快感・悪心・嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状、肝機能の数値の異常が挙げられています。飲み始めてから胃の調子や食欲が落ちたときも含めて、いま飲んでいるお薬を自己判断で中止・減量・変更せず、処方薬なら処方元に、市販品なら添付文書の案内にそって医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。
不妊治療で使われることもあります
当帰芍薬散は、不妊治療の場面で使われることもあります。当帰散・白朮散などと合わせて「安胎薬」と呼ばれるグループに入ります。「安胎薬」は、妊娠中の体調をととのえる目的で古くから分類されてきた呼び名です。
当帰芍薬散の効能・効果には「不妊症」「妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)」が含まれており、妊娠中に処方される場面がある漢方薬です。ただし添付文書では、妊婦または妊娠している可能性のある方について 「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」 とされています。妊娠中・妊娠を希望される方が服用を始める・続ける場合は、必ず医師にご相談ください。市販品をご自身の判断で飲み始めることはお控えください。
授乳中の方については、添付文書で「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」とされています。産後・授乳中に服用をお考えの方も、医師・薬剤師にご相談ください。
不妊治療で通院されている方も、そのままご相談いただけます。基礎体温、周期、通院や服薬の状況を、分かる範囲でお聞かせください。治療の内容をこちらで変えることはありませんので、続けながら体調面のお話ができます。
もちろん、その方の状態によって使い分けますので、気になる点があればお気軽にお声がけください。
散剤とエキス顆粒の違い
当帰芍薬散は名前のとおり「散」ですから、生薬の粉末を混ぜたものが本来の形です。(ご相談の内容によっては、煎じ薬でお渡しする場合もあります。)

「こんな粉で当帰芍薬散って書いてた!」と思った方は、お薬手帳やお薬の説明書を見てみてください。当帰芍薬散エキス顆粒と書かれていることが多いはずです。
エキス顆粒は、昔ながらの散剤とは作り方が違います。そのため飲んだ感じが違う、とおっしゃる方もいらっしゃいます。どちらが良い・悪いという話ではなく、形が違えば感じ方も変わることがある、とお考えください。お手元のお薬の変更は、自己判断ではなく処方元にご相談ください。
☆詳しい散剤の説明については下をクリック!
漢方薬の剤形(エキス顆粒・散剤・丸剤・煎じ薬)の違いと相談時に確認したいこともうひとつ、当帰芍薬散の「朮(じゅつ)」は、製品によって白朮(ビャクジュツ)と蒼朮(ソウジュツ)が使い分けられています。たとえばツムラの医療用(23)では蒼朮が使われています。当店ではお悩みの症状や体質に合わせて、白朮と蒼朮を使い分けています。めまいがある方には白朮、むくみが強い方には蒼朮、と考えて選ぶことがあります。
散剤にするか煎じ薬にするかも含めて、体質に合わせてご提案しています。
最後に
当帰芍薬散は、血が少なめで、少し体がむくんでいる方に向く方向の漢方薬です。生理痛でいえば、後半に痛みやだるさが出るタイプ。逆に、前半に強く痛む・塊が出るタイプの方は手応えが出にくいことがあり、ご相談のときの手がかりにしています。
とはいえ、合いそうなタイプに見えても別の漢方薬をお使いいただくことはありますし、その逆もあります。最後は全身を見て決めることになります。
また、月経のことよりも先に足や顔のむくみが気になっている、という方も少なくありません。そうした方はむくみの漢方相談のページもあわせてご覧いただけます。
飲む前に一度ご相談いただけると、遠回りせずに済むことが多いです。お近くの漢方薬局や漢方内科でも構いませんし、当店でよければ、いま飲んでいる漢方をふまえてお話を伺います。遠方の方はオンライン相談もご利用いただけます。
費用が気になる方は、相談前に料金の目安もご確認いただけます。無理な購入をおすすめすることはありません。
気になる点だけでも、LINEやお電話でお聞かせください。
相談するかはまだ決めていないけれど、まず体質の傾向だけ知りたい、という方は、LINEの「かんたん体質チェック」(13問・お名前不要・1〜2分)からどうぞ。私が回答に目を通して、体質面から見たポイントを原則翌営業日までにLINEでお返しします。
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※ 漢方薬の体感には個人差があります。急な症状の悪化や救急の場合は、医療機関の受診を優先してください。

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