「病院で柴胡加竜骨牡蛎湯をもらっているけど、これいつまで飲むんだろう?」
「飲んだ日は、昼間なんだか眠たい気がする…」
「動悸が気になって調べたらこの名前が出てきたけど、私に合うのかな?」
そんなあなたに、柴胡加竜骨牡蛎湯(ツムラ12)ってどんな漢方薬なのか、続け方をどう考えたらいいのか、一緒に見てみましょう。
実はこの漢方薬、メーカーによって入っている生薬の数が違います。
そこが今日の話の軸になります。
この記事はこんな方におすすめ
- 柴胡加竜骨牡蛎湯を飲んでいるけど、いつまで続けるのか迷っている。
- 飲んでいて眠気や動悸が気になる。
- 市販で買おうか迷い中!ついでに子どもの分も相談したい!
柴胡加竜骨牡蛎湯の中身は?ツムラだけ1味少ないんです。
ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)の電子添文を開くと、1日量7.5g中に次の生薬の乾燥エキス4.5gを含む、と書かれています。
サイコ5.0g
ハンゲ4.0g
ケイヒ3.0g
ブクリョウ3.0g
オウゴン2.5g
タイソウ2.5g
ニンジン2.5g
ボレイ2.5g
リュウコツ2.5g
ショウキョウ1.0g
以上10の生薬が含まれています。
ところが、です。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)に電子添文が載っている医療用の柴胡加竜骨牡蛎湯は9製品あるのですが、ツムラ以外の8製品にはダイオウ(大黄)1.0gが入っています。
つまりツムラだけが10味、残りは11味なんですね。
| 製品(1日量) | 生薬の数 | ダイオウ | エキス量 |
| ツムラ(7.5g) | 10味 | なし | 4.5g |
| クラシエ細粒(6.0g) | 11味 | 1.0g | 3.9g |
| コタロー(7.5g) | 11味 | 1.0g | 5.0g |
| オースギ(7.5g) | 11味 | 1g | 3.4g |
| JPS(7.5g) | 11味 | 1.0g | 4.1g |
(ほかにジュンコウFC・太虎堂・本草・クラシエ錠もダイオウを含みます。)
右端の「エキス量」も見てください。
生薬の分量はほとんど同じなのに、出来上がったエキスの量は3.4gから5.0gまで開きがあります。
同じ処方名だから同じもの、ではないんですよね。
ちなみにカンゾウ(甘草)は、この医療用9製品のどれにも入っていません。
漢方薬というと甘草の重なりを気にする方が多いのですが、この処方に関しては医療用だと事情が違います。
当店でも、お薬手帳と市販薬の箱をそのままお持ちいただいて、どのメーカーのものを飲んでいるかから一緒に確認しています。
柴胡加竜骨牡蛎湯ってどんな人に使うの??
どのようなタイプに合うか、効能又は効果から引っ張ってきますと…
比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症:高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎
並んでいる病名の多さに、ちょっと驚かれたかもしれません。
でも私がいつも読んでほしいのは、後ろの病名より書き出しの一文の方です。
「比較的体力があり」から始まっていますよね。
続いてダイオウの入っている製品の方を見てみましょう。
精神不安があって、どうき、不眠などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜なき
ずいぶん短くなりました。
てんかんも陰萎も慢性腎臓病も、こちらには載っていません。
1味の違いが、書いてある範囲まで変えているわけですね。
コタローの製品はもっと具体的で、効能・効果の中に「臍部周辺に動悸を自覚し、みぞおちがつかえて便秘し、尿量減少するもの。」という描写まで入っています。
おへその周りの動悸、みぞおちのつかえ、便秘、尿の量。
「私めっちゃあいそうやん…」って思われたかもしれませんが、ここに書いてある状態がひととおりそろっているかどうか、なんですよね。
(もちろん、書き出しの一文だけで決めつけるのもよくないですが)
それから、てんかん・陰萎・慢性腎臓病は医療用にだけ書かれている効能です。
市販の柴胡加竜骨牡蛎湯には並んでいませんので、店頭でこれらのお悩みを漢方薬だけで扱うことはありません。医療機関でご確認ください。
市販の柴胡加竜骨牡蛎湯は、もっと中身の幅が広いです。
ここまでは病院でもらう方のお話でした。
ドラッグストアで買える方はどうかというと、実は国の定めた基準の時点で、中身に幅を持たせてあります。
成分・分量:柴胡5、半夏4、茯苓3、桂皮3、大棗2.5、人参2.5、竜骨2.5、牡蛎2.5、生姜0.5-1、大黄1、黄芩2.5、甘草2以内(大黄、黄芩、甘草のない場合も可)
効能・効果:体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症/高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘
末尾の「大黄、黄芩、甘草のない場合も可」。
ここが効いています。
実際、ツムラ漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(第2類医薬品)はダイオウもカンゾウも入っておらず、1日2回食前。
「クラシエ」漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(第2類医薬品)はダイオウ0.5gを含む11味で、1日3回食前又は食間。
飲む回数まで違うんですよね。
棚に2つ並んでいたら、どちらも同じに見えると思います。
箱の裏の成分表、レジに行く前に一度めくってみてくださいね。
なお、医療用には甘草が入っていませんが、基準の上では2g以内で含みうる書き方になっています。市販品は製品ごとに確認が必要です。
一緒に飲んでいるお薬、ダイオウが重なっていませんか?
面白いもので、この処方の医療用9製品には、薬の名前を挙げた「禁忌」「相互作用」の項がそもそもありません。
代わりに全製品共通で、こう書かれています。
「他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。」
ダイオウを含む8製品にはさらに、「ダイオウを含む製剤との併用には、特に注意すること。」「ダイオウの瀉下作用には個人差が認められるので、用法及び用量に注意すること。」が続きます。
市販の大黄入りの方には、他の瀉下薬(下剤)と一緒に飲まないことが「してはいけないこと」として書かれています。
便秘薬を常用している方、漢方薬を2つ3つ飲んでいる方は、ここが確認どころですね。
当店でも、病院のお薬を飲んでいる方のご相談を承っています。安全確認のため、飲んでいるものは市販薬・サプリメントも含めて全部教えてくださいね。
効果が出るまでって、どのくらい??やめどきは??
「効果っていつから出るんだろう??」
ご相談でもよく届く質問です。
ところが添付文書を最初から最後まで読んでも、「何日で効きます」とは書かれていません。
書いてあるのは変わらない時に相談する目安の方なんですよね。
ツムラの市販品の説明文書には、「1ヵ月位(小児夜泣き、便秘に服用する場合には1週間位)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師または登録販売者に相談してください」と書かれています。
厚生労働科学研究の研究班がまとめた市販品向けの確認票には、「長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」とも書かれています。
医療用の方は、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には継続投与を避けること、と。
つまり「1ヵ月飲めば効く」という意味ではなくて、変化がないまま飲み続けないための目安なんです。
様々なご意見があるかと思いますが、一番よくないのは「効果もないのに飲み続けること」ではないかと思っています。
ただ、これは「自分でやめましょう」という話ではありません。
病院でもらっている分をご自身の判断で中止・減量・変更するのはやめておきましょう。続けるか、やめるかは処方元の先生と決めることです。
変化がないまま何ヶ月も過ぎているなら、次の診察でその話を出してみましょう。
当店にご相談いただく場合も、まずは数週間〜数ヶ月の経過を見ながら、というのが一般的なところです。
その時に伺うのは、飲み始めてからの体調の変化、便通の様子、一緒に飲んでいる他のお薬やサプリメント、いま医療機関で受けている治療のことなどです。
最初から全部そろっていなくて大丈夫です。気づいたところからお話しください。
どのメーカーのものか(箱や説明書に大黄が入っているかどうか)、いつ頃から飲んでいるか、便通の様子も、分かる範囲で教えてください。ご家族の分のご相談でもかまいません。
LINEで相談内容を送る お電話: 072-464-1181
メッセージは24時間お送りいただけます(営業時間内に順次返信)。
飲んだ日、なんだか眠い気がするんですけど?
「飲んだ日は眠い気がする」というお声、実は多いんです。
それで調べてみたのですが、医療用9製品にも、ツムラの市販品の説明文書にも、研究班の確認票にも、副作用の欄に眠気・傾眠の記載はありませんでした。
書かれているのは、発疹・発赤・瘙痒・蕁麻疹などの過敏症と、消化器の症状です。
ツムラは「胃部不快感等」、ダイオウの入っている製品は「食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢等」と、ここでも書き分けられています。
ですので「眠くなりません」と申し上げるのではなく、記載がない、というのが正確なところですね。
眠気が生活に差し支えているなら、量や時間をご自身で加減する前に、いつ・どのくらい眠くなるのかをメモにして処方元へお伝えください。
ご高齢の方については「減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。」と書かれていて、量の調整は処方医の判断になります。
動悸が気になって調べてこられた方へ
ツムラの効能又は効果には「心悸亢進」「神経性心悸亢進症」、ダイオウの入った医療用の多くの製品には「どうき」(コタローとジュンコウは漢字で「動悸」)、市販の方には「動悸」と並んでいます。
動悸で検索してこのページにたどり着いた方も多いと思います。
ただ、動悸というのは心臓そのものの問題であることもありますので、まだ医療機関にかかっていないなら、そちらが先です。
とくに胸の痛み・失神・冷や汗・強い息切れをともなう動悸のときは、漢方相談より先に救急の受診(119番を含めて)を優先してくださいね。
当店の公開している改善例にも、病院の検査で心電図等に異常がなく、動悸と冷えのご相談に来られた方のお話があります。
柴胡加竜骨牡蛎湯を飲まれた例という話ではなく、体質から考えていったご相談の一つです。
その方は1ヶ月後で「あまり効果は感じない」、2ヶ月後で「マシな気はするけどわからない」、3ヶ月経ってようやく調子の良さを実感された、という経過でした。
正直に書きますと、時間がかかると分かっていて始めるご相談もあります。
※症状や効果効能は個人差があります。同等の効果を保証するものではないので、ご了承ください。
あなたに適する漢方薬に出会えることが一番の漢方治療と思います。
医療用9製品の電子添文には、重大な副作用(いずれも頻度不明)として間質性肺炎と、肝機能障害・黄疸が記載されています。服用中に次のような症状に気づいた場合は、漢方相談に先行して、処方元または医療機関へご連絡ください。以下は、厚生労働科学研究の研究班がまとめた市販品向けの確認票に書かれている症状の表現です(この確認票は大黄を含む商品を念頭に作られています)。
・間質性肺炎:「階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。」
・肝機能障害:「発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。」
・偽アルドステロン症、ミオパチー:「手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。」(承認基準では甘草を2g以内で含みうるため、市販品は製品ごとに成分の確認が必要です)
・「はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛」があらわれた場合は中止して相談を。「軟便、下痢」が続いたり強くなったりする場合も同様に書かれています。
妊婦・妊娠している可能性のある方:大黄を含む8製品は「投与しないことが望ましい」とされ、子宮収縮作用及び骨盤内臓器の充血作用による流早産の危険性が理由として書かれています。大黄を含まないツムラ12は有益性投与の記載です。服用の可否は必ず医療機関へご確認ください。
授乳中の方:大黄中のアントラキノン誘導体が母乳へ移行し、乳児の下痢を起こすことがあるとされ、市販の大黄含有品は服用しないか授乳を避けることとされています。
乳幼児:市販品は生後3ヵ月未満の乳児には服用させないこととされています。ツムラの市販品では、1歳未満の乳児には医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合にのみ服用させるよう書かれています。
「自律神経」って書いてあります?
この処方、ネットでは「自律神経を整える漢方」として紹介されていることが多いです。
ただ、電子添文の中に「自律神経」という言葉は出てきません。
ツムラの薬効薬理の欄には向精神作用の項目があるのですが、これは水浸拘束したラットの副腎重量や、前頭前野のセロトニン・ドパミン放出を調べた動物実験のデータです。
人で確かめられた効果として書かれているわけではありません。
じゃあ自律神経とは無関係かというと、そういう話でもないんです。緊張や不安、イライラといった心の揺れは自律神経にも影響しますから、当店の漢方相談でも、「自律神経の乱れが気になって」というお話の中で柴胡加竜骨牡蠣湯の名前が挙がることはよくあります。
ただし、自律神経のご相談で登場する漢方薬はたくさんあって、柴胡加竜骨牡蠣湯はそのうちのひとつです。どれが合いそうかは、体質や症状の出方を伺いながら一緒に考えていきます。
ですので「自律神経に」という言い方をするときは、それが店頭でのご相談の話なのか、伝統的な考え方に基づく説明なのか、電子添文に載っている話なのか、私は分けてお伝えするようにしています。
夜泣きにも使うって本当??
効能の欄を並べてみると、医療用はツムラとコタローが「小児夜啼症」、ダイオウの入った製品が「小児夜なき」。市販の承認基準は「小児夜泣き」です。
同じお悩みなのに、書き方が三通りあるんです。細かい話ですが、このページでもそれぞれの欄の表記どおりに引用しました。
一方で医療用9製品には、そろって「小児等を対象とした臨床試験は実施していない。」とも書かれています。
市販品で夜泣きに使う場合の目安は1週間位、それでよくならなければ相談を、でしたね。
「子どもを連れて行くのが大変で…」という声も届きます。
当店では、保護者の方だけで先に状況をお伺いするケースも承っていますので、気軽にお声がけくださいね。
そもそも、昔から一つに決まっていた処方じゃないんです。
ここまでメーカーの違いばかり書いてきましたが、実はこの話、今に始まったことではありません。
この処方の出典は『傷寒論(しょうかんろん)』という古典です。
宋板傷寒論の条文はこうなっています。
「傷寒八九日、下之、胸満煩驚、小便不利、譫語、一身尽重、不可転側者、柴胡加竜骨牡蠣湯主之。」
寝返りも打てないほど体が重い、という状態が書かれています。
話はここからで、日本東洋醫學會誌に載った寺師睦宗先生の考証(1975年)では、脈経・千金翼方・金匱玉函経・外台秘要・康平傷寒論・宋板・註解傷寒論という7種のテキストを並べて、条文と薬方が一つずつ校勘されています。
読んでいくと、どのテキストも字句や薬味がそろっていないのがわかります。
そのうえで「傷寒論の原方は不明であり、現在用いられているのは千金翼方の薬方で、鉛丹を去って十一味として使用している。」と書かれています。
鉛丹(えんたん)を抜いた十一味、ということですね。
千年以上前から揺れていたものが、いまメーカー差として残っている。
そう考えると、「同じ名前だから同じ薬」ではないのも納得ではないでしょうか。
(ついでに。この学会誌の題名は「牡蠣」、PMDAに載っている製品名の多くは「牡蛎」です。どちらで検索されても同じ漢方薬ですのでご安心くださいね。)
☆症状から探している方は下からどうぞ。
不安感・動悸・自律神経の乱れといったお悩みから探している方に向けて、症状ごとの相談ページもご用意しています。
特定の漢方薬をおすすめするページではありませんので、診断・治療の内容は医療機関でご確認ください。
漢方薬の組み合わせ方針については、当店の漢方薬のご相談・お取り扱いについて もあわせてご覧ください。
最後に
いかがでしたか?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、ツムラだけが大黄を含まない10味で、残り8製品は大黄入りの11味。
その1味の違いが、効能の文言も、妊婦さんへの注意も、副作用の欄も変えていました。
続けるか、やめるかで迷ったときは、書き出しの体質の一文と、いま飲んでいるもの全部を並べてみるところからです。
あなたのお手元にあるのは、大黄が入っている方でしょうか、入っていない方でしょうか?
神皇漢方薬局でも、医療機関での診断・治療をふまえながら、体質と服薬中のお薬を確認したうえで漢方相談をお受けしています。
費用が気になる方は、相談前に料金の目安もご確認いただけます。無理な購入をおすすめすることはありません。
もちろん当店でなくてもかまいません。漢方薬について真剣に考えてみようかな?と思われましたら、お近くの漢方薬局や漢方に詳しいお医者さんにお聞きくださいね。
LINEで相談内容を送る お電話: 072-464-1181 ご予約フォーム
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※ 漢方薬の体感には個人差があり、症状の変化を保証するものではありません。処方薬は自己判断で中止・減量・変更しないでください。漢方相談は医療機関での診断・治療を尊重しながら、体質面のご相談として承ります。急な症状の悪化や救急の場合は、医療機関の受診を優先してください。

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