「疲れきっているのに、布団に入ると目だけがさえるんです。」
「酸棗仁湯って、やっぱり寝る前に飲むものなんですか?」
「しばらく飲んでいるけど、効いているのかよく分からなくて…」
そんなあなたに、酸棗仁湯(さんそうにんとう・ツムラ103)ってどんな漢方薬で、飲む時間と続け方をどう考えたらいいのか、電子添文に書いてあることを手がかりに一緒に見てみましょう。
病院でもらっている方も、薬局で買って飲んでいる方も、気になっているところは案外似ています。
この記事はこんな方におすすめ
- 酸棗仁湯を飲んでいるけど、効いているのかよく分からない。
- いつ飲むのが正しいのか、寝る前でいいのか知りたい。
- 毎日飲んでも平気?ついでに市販のものとの違いも教えてほしい!
酸棗仁湯の中身、なにが入っているの??
医療用の酸棗仁湯は5種類の生薬でできています。
ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)の添付文書では、1日量7.5g中に次の生薬の乾燥エキス3.25gを含む、と書かれています。
サンソウニン10.0g
ブクリョウ5.0g
センキュウ3.0g
チモ3.0g
カンゾウ1.0g
以上5つの生薬が含まれています。
ところが、同じ「酸棗仁湯」でも大杉製薬のオースギ酸棗仁湯エキスGは、1日量が6.0gで乾燥エキスが2.8g。
そしてサンソウニンのところが15gになります。
残りの4種類は同じ生薬で、分量も同じですね。
つまり、同じ名前の漢方薬でも1日量も、エキスの量も、主役の生薬の量も違うということです。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の一般名の一覧を見ると、医療用の酸棗仁湯エキス製剤として掲載されているのは、この2社の製品ですね。
「たかが名前の違いでしょ」と思われるかもしれませんが、当店では生薬の産地や質、「散剤」「煎じ薬」といった薬の形まで含めて体質に合わせてご提案しております。
お手元の箱や説明書に書いてある生薬の名前と1日量、一度見てみてくださいね♪
酸棗仁湯はどんな人に使う漢方薬??
病院で処方される酸棗仁湯(医療用医薬品)と、薬局で買える酸棗仁湯(一般用医薬品)では、書かれている効能の範囲が違います。
まずは医療用から引っ張ってきますと…
心身がつかれ弱って眠れないもの
たった一行です。
大杉製薬のオースギ酸棗仁湯エキスGも同じ内容で、こちらは「心身が疲れ弱って眠れないもの」と、「つかれ」が漢字で書かれているだけの違いですね。
私がここで注目していただきたいのは、「眠れない」の手前に置かれている一文の方です。
「心身がつかれ弱って」。
眠れない、という結果だけでなく、そこに至るまでに心も体も消耗している、という前提が先に書いてあるわけです。
続いて市販品。
多くの市販の酸棗仁湯は、厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準という決まりに沿って作られています。
体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの次の諸症 不眠症、神経症
並べてみると、書き出しが違いますよね。
医療用は「心身がつかれ弱って眠れないもの」、市販品は「体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるもの」。
市販品の方には「精神不安」が並び、後ろの症状名として「不眠症」「神経症」が挙がります。
「疲れてるし眠れないし、私にも合いそう」
そう思っちゃいますよね。
ですが、漢方薬は後ろに並んだ症状の名前だけで決めるものではなく、その手前の体質の一文がけっこう大事だったりします。
それに、お手元のものが医療用か市販品かで、書かれている範囲そのものが変わります。
この2つは別々の決まりで書かれた文章ですので、混ぜて読まないようにしてくださいね。
逆に、ここに書かれていないお悩みについては、このページでは扱っていません。気になる場合は医療機関でご確認ください。
酸棗仁湯って寝る前に飲むんじゃないの??
ご相談でもよく届く質問です。
眠るための漢方薬なんだから、寝る前でしょう。私も最初にそう思いました。
ところが、ツムラの用法及び用量の欄にはこう書かれています。
「通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」
大杉製薬の方も、1日6.0gを2~3回に分割して食前又は食間、です。
どちらにも「就寝前」という指定はありません。
ちなみに「食間」というのは食事の最中のことではなく、食後2時間ぐらいの、お腹が空いているタイミングのことをいいます。
ここ、取り違えられやすいところですね。
「じゃあ寝る前に飲んだらダメなの?」と思われるかもしれませんが、私は「書かれている飲み方はこうですよ」までしかお答えできません。
飲む回数も時間もご自身の判断で変えるのはやめておきましょう。処方されている方は、飲むタイミングを変えたくなった時点で処方元の先生か薬剤師にお伝えください。
医療用には「年齢、体重、症状により適宜増減する」とも書かれていて、その増減を決めるのは処方医です。
当店にご相談いただく場合も、まず伺うのは「いま何を、1日何回、どのタイミングで飲んでいるか」からです。
効いているのか分からない。どこで区切るの??
面白いもので、書かれているのは「効くまでの期間」ではなく、変わらない時に相談する目安の方なんですよね。
市販の酸棗仁湯の使用上の注意には、1週間位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること、と書かれています。
この「よくならない場合」の目安、実は処方ごとに長さが違います。
そのなかで酸棗仁湯は1週間位と書かれているんですね。
「1ヵ月は飲まないと分からないんでしょ」と思って飲み続けておられる方、お手元の説明書を一度見てみましょう。
医療用の方はというと、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること、と書かれています。
つまりどちらも「これだけ飲めば効く」という意味ではなく、変化がないまま飲み続けないための目安です。
様々なご意見があるかと思いますが、一番よくないのは「効果もないのに飲み続けること」ではないかと思っています。
ただ、これは「自分でやめましょう」という話ではありません。
病院でもらっている酸棗仁湯を、ご自身の判断で中止・減量・変更するのはやめておきましょう。続けるか、やめるかは処方元の先生と決めることです。
変化がないまま何ヶ月も過ぎているなら、一度その話を相談の場に出してみましょう。
当店にご相談いただく場合も、まずは数週間〜数ヶ月の経過を見ながら、というのが一般的なところです。
その時に伺うのは、飲み始めてからの体調や眠りの変化、一緒に飲んでいる他のお薬やサプリメント、体質や生活の変化、いま医療機関で受けている治療のことなどです。
それと、眠りのお話では生活のリズムも必ず伺います。
とはいえ、夜勤や夜型のお仕事で、早く休むこと自体が難しい方もいらっしゃいます。当店ではその方に合わせた方法を考えてご提案いたします。
最初から全部そろっていなくて大丈夫です。気づいたところからお話しください。
いつ頃から飲んでいるか、寝つきと、途中で目が覚めるのと、どちらが気になるか、他に飲んでいる漢方薬や市販薬があればその名前も、分かる範囲で教えてください。
LINEで相談内容を送る お電話: 072-464-1181
メッセージは24時間お送りいただけます(営業時間内に順次返信)。
毎日飲み続けても大丈夫??
これも気になるところですよね。
市販の酸棗仁湯には、長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること、と書かれている製品があります。
これはカンゾウ(甘草)を一定量以上含む製剤に置かれている注意ですので、お手元のものに書かれているかどうか、説明書を見てみてくださいね。
医療用の方にも「本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意すること」と書かれています。
ご高齢の方については「減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。」とあり、量の調整は処方医の判断になります。
「毎日飲んでいいですか?」の答えは、飲んでいるものと体の状態を並べてみないと出せない、というのが正直なところですね。
一緒に飲んでいる漢方薬、カンゾウが重なっていませんか?
酸棗仁湯には、ツムラも大杉製薬もカンゾウが1日1g入っています。
カンゾウを含む他の製剤と一緒に飲む場合の注意が、相互作用の欄に書かれています。
カンゾウ含有製剤(芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散 等)、グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤
→ 偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパチーがあらわれやすくなる。
同じ紙の重要な基本的注意にも、「他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。」と書かれています。
芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散。名前だけ見ると全く別の漢方薬ですが、中身をあけるとカンゾウが共通で入っています。
カンゾウは、市販の酸棗仁湯にも入っています。
漢方薬を2つ3つ飲んでいる方、市販薬と病院のお薬を一緒に飲んでいる方は、同じ生薬が重なっていないかが確認どころですね。
ご相談のときは、お薬手帳と市販薬のパッケージを、そのままお持ちいただくのが確実です。
病院のお薬を飲んでいる方のご相談も承っています。安全確認のため、飲んでいるお薬は全部教えてくださいね。
頻度不明の重大な副作用として、偽アルドステロン症・ミオパチーが記載されています。服用中に以下のような症状に気づいた場合は、漢方相談に先行して、処方元または医療機関へご連絡ください。
・手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる
・血圧の上昇、むくみ、急な体重の増加
・四肢のけいれんや麻痺
このほか、吐き気、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢などの記載もあります。胃腸の虚弱な方については「食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等があらわれることがある」、食欲不振・悪心・嘔吐のある方については「これらの症状が悪化するおそれがある」と、それぞれ別に書かれています。市販品では、胃腸の弱い方、下痢又は下痢傾向のある方は、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者へ相談することとされています。
ご高齢の方は「減量するなど注意すること」とされています。市販品でも、カンゾウの配合量によっては、高齢の方・むくみのある方・高血圧/心臓病/腎臓病の診断を受けた方は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者へご相談くださいと書かれている製品があります。
妊婦の方は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること、授乳中の方は授乳の継続又は中止を検討すること、小児等を対象とした臨床試験は実施していない、とされています。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方は、処方を受けている場合も含め、服用の可否を医療機関へご確認ください。
市販の酸棗仁湯は生後3ヵ月未満の乳児には服用させないこととされ、製品によっては15歳未満は服用しないことと定められているものもあります。用法は製品ごとに違いますので、必ずお手元の説明書をご確認ください。
睡眠薬とはどう違うんですか??
ここも気になるところですよね。
まず事実として、酸棗仁湯の薬効分類名は「漢方製剤」です。
日本標準商品分類番号でいうと875200。催眠鎮静剤として承認されているお薬とは、そもそも分類の棚が違うわけですね。
ここから先、どちらが優れているとか、どちらが安全だとかいうお話を私はいたしません。分類が違うものを並べて勝ち負けをつけても、あなたの眠りの助けにはならないからです。
もうひとつ。併用注意の欄に書かれているのは、先ほどのカンゾウ含有製剤とグリチルリチン酸を含む製剤で、睡眠薬の名前は挙がっていません。
ただ、書かれていない=一緒に飲んで平気、という意味ではありません。
いま睡眠のお薬を飲んでおられるなら、併用してよいかどうかは処方元の先生か調剤薬局の薬剤師さんに確認してください。そこは私が代わりに決められるところではありません。
酸棗仁湯って「酸棗湯」とも書かれている??
ここでちょっと寄り道を。
酸棗仁湯の出典は、後漢の張仲景がまとめた『金匱要略』という古い本の、血痹虛勞病脈證并治という篇です。
そこに「虛勞虛煩不得眠」、つまり疲れきって眠れないという状態に用いる処方として載っています。
面白いのは処方の名前の方でして、版本によっては「仁」の字が入らない「酸棗湯」と記されているものもあるんですね。
ついでに申しますと、生薬の分量にも版本による異同があります。
ですのでこの記事では、古典側の分量は数字で書きません。どれが正しいと言い切れないものを、それらしく書くのがいちばんよくないと思っていますので。
言えるのは、疲れきっているのに眠れない、という状態に対して、ずいぶん昔から使われてきた処方だということですね。
睡眠はとても重要です。何といっても人生の約1/3は寝ている時間ですからね。
薬局で買える酸棗仁湯との違いは?
市販の酸棗仁湯は第2類医薬品として、複数のメーカーから顆粒や細粒などの形で出ています。
承認基準の上では、酸棗仁は10~18、知母2~3、川芎2~3、茯苓2~5と幅がありますが、甘草だけは1で、幅がありません。
実際の製品では、基準の量より少なめに作られているものもあります。それでも、市販だからカンゾウの心配がない、ということはありません。
ここまではメーカーさんや承認基準の記載の紹介であって、効果を約束するものではありません。
☆症状から探している方は下からどうぞ。
眠りのお悩みそのものについて、相談の進め方をまとめたページもご用意しています。
特定の漢方薬をおすすめするページではありませんので、診断・治療の内容は医療機関でご確認ください。
☆同じく「不眠症」が書かれている漢方薬はこちらをクリック!
効能の書き出しにある体質の一文が、処方ごとにどう違うかを並べています。
抑肝散(ツムラ54)のやめどきと眠気|添付文書からみる続け方の考え方
漢方薬の組み合わせ方針については、当店の漢方薬のご相談・お取り扱いについて もあわせてご覧ください。
最後に
いかがでしたか?
酸棗仁湯は5つの生薬でできていて、効能の書き出しに「心身がつかれ弱って」という前提が置かれている漢方薬でした。
飲むタイミングは食前又は食間で、就寝前とはどこにも書かれていない。
市販品で変化がないときの目安は1週間位。カンゾウが1日1g入っているので、重なりに気をつける。
あなたのお手元にあるのは、医療用でしょうか、それとも市販品でしょうか?
神皇漢方薬局でも、医療機関での診断・治療をふまえながら、体質と服薬中のお薬を確認したうえで漢方相談をお受けしています。
費用が気になる方は、相談前に料金の目安もご確認いただけます。無理な購入をおすすめすることはありません。
もちろん当店でなくてもかまいません。眠りのことを漢方で考えてみようかな?と思われましたら、お近くの漢方薬局や漢方に詳しいお医者さんにお聞きくださいね。
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